xEV向けパワーユニット部品へのFSWの適用と事例

2010年代からxEV向けパワーユニット部品にFSW(摩擦攪拌接合)の適用が増えてきました。Boschのインバータユニットを皮切りにChevrolet、ToyotaがFSWを採用している状況です。FSWはコスト低減、製品機能向上、ダイカストの問題解決に寄与することから、今後の増加が期待されています。本ページではパワーユニット部品へのFSWの適用と事例について説明します。

目次

1. 自動車部品へのFSW適用と装置

自動車へのFSWの適用は、今に始まったわけではありません。ボディには従来から利用されている工法です。従来はスポット溶接、ボルト接合、リベット接合などで締結していたものを、FSWを用いて締結する事例が高級車をはじめとしてみられるようになっています。トヨタ自動車、日産自動車、本田技研などなど、多くのメーカーが導入しています。

最近ではxEV向けパワーユニットにもFSWが適用されはじめてきました。主に水冷回路形成のためにFSWが用いられています。それというのもパワー半導体は冷却をする必要があるのです。冷却するにはパワー半導体を保持する筐体に冷却回路が必要となります。こうした筐体部品にはアルミニウムダイカストが用いられるのですが、一般的にダイカスト工法は中空が作れません。詳細は以下リンクに譲りますが、この冷却回路(中空)をつくるのにFSWが適していて、いま注目を浴びています。
※ xEV:PHEV、HEV、BEVなど

工作機械メーカーもそれを睨んだ設備を提供しています。ヤマザキマザック、ホーコス、芝浦機械などがFSW装置を提供しています。当社ではヤマザキマザックFSW-460Vを使用し、開発、試作サービスを提供しています。

FSW加工機2

2. EV用パワーユニットへのFSW適用の事例

実際にFSWが多くの自動車のパワーユニットに適用されているかというと、実はそうでもありません(2023年時点)。まだまだ発展途上です。とはいえxEVのパワーユニットにFSWの適用が徐々に増えてきたのも事実ですので紹介いたします。 以下は当社ティアダウン及び文献調査から判明したFSWが適用された自動車です。その他メーカーでもFSWは使われていると思われますが、ティアダウン結果は一般に秘匿にされていますので限定的な情報と考えていただければ幸いです。 。

  • Peugeot 3008 PHV
  • Audi A3 e-Tron(第1世代 2014年~2018年) 1)
  • Chevrolet VOLT extended-range EV(第2世代 2016年製造) 2)
  • Tesla Model 3? 4)
  • Audi e-Tron(2019年製) (ADC10×Al226D)
  • Tesla Model Y Performance AWD 2020
  • 日産 ARIYA(2022年式) EV用ケース(ADC3)
  • Mercedes-Benz EQS(2022年式) DCコンバーターケース(AlSi10Mg(Fe))

Audi A3 e-Tron(第1世代 2014年~2018年)

画像:wikipedia4)

榊原精器の調査範囲ではありますが、xEV用パワーユニットにFSWが適用された部品はBOSCH製インバータケースが初になります。プジョー3008PHVのインバータケースにおいて、ダイカスト製品と純アルミニウムのFSWが見られました。純アルミニウム側はパワー半導体のチラーとなっていて、ピンフィンを有していました。従来は銅チラーが使われているものを熱伝導率の高い純アルミニウムに置換した画期的な設計がされていました。銅の熱伝導率394W/(m・K)に対し、アルミニウムの熱伝導率は236 W/(m・K)と少々劣るのですが機能設計を成立させています。
その他、Audi A3 e-Tron PHV(第1世代)にBOSCH製インバータケース、Chevrolet VOLT extended-range EVにDelphi Technologies製インバータハウジングが用いられています。日本ではトヨタRAV4の昇圧コンバータ部品にFSWが適用されていています。
最近みた感じですと、やはりBEVにFSWの適用が増えています。Audi e-tron(2019年モデル)にADC10とAl226Dの接合がみられました。材質名は製品に刻印されているものを読み取っているのですが、ドイツメーカーのクルマにADC10と書いてあるのがなんとも奇妙でおもしろかったです。
その他には日産アリアのケーシングにもFSWが使われています。こちらはケーシングはADC3、蓋は材料不明でした。ベンツのEQSのDCコンバーターケースにはAlSi10Mg(Fe)と記載がありましたので、日本でいうところのADC1系統の材料が用いられています。テスラのモデルYの熱マネ部品にもFSWが使われていることを確認できました。「え、こんなんでいいの」という接合部の外観でしたが、機能上OKなんでしょう。

FSW接合状況

3. 今後のパワーユニット部品へのFSWの展開

2010年代の自動車のパワトレ部門では「FSWは海のモノか山のモノかわからない」という状況が多かったように思います。ものづくり太郎さんの2023年12月1日の動画5)においても、東海3県の人にマザックブースで
「FSWきてるから導入しないと!」
「FSW知ってますか?」
と話をしてもほとんどの担当者は認識していないとおっしゃってました。自分の専門領域以外はそんな感じだと思いますが、まだまだ認知度が低いことは理解できます。
とはいえ、FSWは工程集約ができる、製品機能を上げられる、ダイカストのネガが反映され難いなどの恩恵を受けられます。したがって今後は「この製品であればFSWがQDCとして最適だよね」のような議論及び設計が進むと考えられます。そのときに試作やら量産をどうしよう、となりましたらFSWのモデルラインをもつ当社にお任せください。なんとかがんばります。

引用

  1. Al Steier, Munro & Associates, and Alan Munday, Ricardo Strategic Consulting, Advanced Strong Hybrid and Plug-In Hybrid Engineering Evaluation and Cost Analysis (2017)
  2. M. Anwar et al., SAE Int. J. Alt. Power, 4(2015) Issue 1
  3. 古野間, 鰐部, 須網 :豊田自動織機技報 71(2020) 67?
  4. https://en.wikipedia.org/wiki/Audi_A3
  5. https://www.youtube.com/watch?v=jBeYAUV4kgk

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