EUROGUSS 2024におけるFSWの展示状況
EUROGUSS 2024はドイツニュルンベルクで開催されるダイカストの国際見本市です。ダイカストへのFSW技術に関して、世界的な動向を確認するためEUROGUSSに参加しました。設備メーカーだけでなく、ダイカストメーカー、試作メーカーからFSW技術の展示があり、活況になっていると思われます。
目次
1. EUROGUSSとは?
EUROGUSSとはダイカストの国際見本市です。ドイツのニュルンベルクで2年毎に開催される世界的なイベントです。EUROGUSS 2024は2024年1月16日から18日に開催され、公式発表によりますと14,341名の来場者がありました1)。
EUROGUSSはダイカストをメインに取り扱っていますので、アルミニウムをはじめとする軽合金鋳造に携わる方が対象になります。「ダイカストの国際見本市」といっても日本的なダイカスト(HPDC)だけではありません。ここでのダイカストは金型鋳造を指します。そのため、高圧鋳造(HDPC)のみならず低圧鋳造(LPDC)、重力金型鋳造(GDC)が含まれます。材料、炉、鋳造機、周辺設備、加工設備、検査設備、そして製品の展示があります。 日本ではGIFAが有名です。GIFAは鋳造という大きな括りになり、それにともない規模がかなり大きいですが、EUROGUSSはダイカストに絞っていますので多少コンパクトです。GIFAと比較すると、EUROGUSSへ参加される方は少ないのですが、その反面視察しやすいというメリットがあります。軽合金鋳造に関わる方はEUROGUSSもチェックされるとよいと思います。
2. FSWとEUROGUSS
「ダイカストの展示会なのにFSW?」
と思った方もいると思いますが、いまダイカスト業界ではFSWがホットです。ですので積極的にFSWを売りにしているメーカーが多くあります。当社榊原精器もFSWを導入していますので次回は参加しなければ・・・と夢をもっています。
FSWに関して以下メーカーのブースで実物の展示がありました。
- RYOBI(量産)
- GRENZEBACH(量産)
- Laki 131(量産)
- FORMKON(試作)
- STIRTEC(設備)
この他にも素材メーカーや機械加工メーカーと話していると
「FSWできるよ」
という話をちょくちょくききましたので、日本よりは一般的な感じがします。というのも欧州製EVもしくは中国製EV向けにすでにFSWが導入されたものがありますので、当たり前なのかもしれません。写真は展示会場内を示しています2)。
3. FSWを展示しているメーカーからのヒアリング
FSW技術を展示しているメーカーさんにヒアリングしました。その簡単な紹介をいたします。各メーカーさんから実物写真の撮影も許可されているのですが、控えさせていただきます。ブース全景でなんとなくのイメージをしていただければ幸いです。詳細レポートをご希望の方はお問い合わせください。
3.1 RYOBI
日本を代表するダイカストサプライヤーのRYOBIさん。2022日本ダイカスト会議でも展示があったようにFSWとレーザー溶接の展示がありました。
日本語が通じるスタッフが大勢いますので落ち着きます。10数年前にお世話になった営業さんがいらっしゃって、世間話をして終わりました。私は何しにきたんだろう・・・
3.2 GRENZEBACH
量産製品、設備を扱う総合メーカーGRENZEBACHさん。大手OEM向けにFSWした製品を提供しているそうです。
「FSWのアドバンテージはレーザー溶接よりも入熱が少なく、製品のひずみが少ないこと」
とどこかできいたことある話をしてくれました。その他には、FSWの品質保証の考え方、客先要求などについてお話をさせていただき、かなり参考になりました。
3.3 Laki 131
ブルガリアの量産ダイカストメーカーであるLaki 131さん。ダイカスト、機械加工をやっていて、FSWにも業務を拡大されたそうです。軍事、自動車、鉄道業界からの引き合いがあるようです。
3.4 FORMKON
デンマークの本社を置く試作専業メーカーであるFORMKONさん。
砂型鋳造、ダイカスト(重力鋳造のことだと思います)、切削加工まで、トータルに試作を業務を請け負うメーカーです。市場からFSW需要があるとのことで、FSWを展示されたようです。展示内容をみるとやはりインバータケースあたりに需要があるようですね。
3.5 STIRTEC
オーストリアでFSW装置を専業でつくられるSTIRTECさん。
20年前ぐらいに創業され、FSW装置専業で事業を継続されているそうです。ブースに飾ってある製品をみてわかるようにインバーターケースあたりの需要があるそうです。展示物は量産向け電動化ユニット、量産向けHV用インバーターユニット、試作の冷却ユニット、試作のバッテリーケースがありました。
担当者と話していて、欧州では要求機能別に材料選定がしっかりしているな、と思いました。設計の要求がこれだからこの材料を選定する。意外に難しいんですが正しいです。
榊原精器ではヤマザキマザックさんのFSW-460Vを導入しています。これと同レベルの装置をSTIRTECさんから購入すると、FSW-460Vの方が価格競争力はありそうです。
4. まとめ
EUROGUSS2024では結構FSWが展示されていた。FSWの採用動向が加速している、というのが素直な感想です。ダイカストの展示会なのにFSWが展示されていることは、裏をかえせばそれだけFSWの需要があるということです。事実として欧州製OEMでは、FSWをつかった接合がみられるようになってきました。設備メーカーだけでなく、素材メーカー、試作メーカー、加工メーカーがFSW技術に関して売り込みをしている状況といえます。
FSW技術では、品質保証、デリバリー、コストはもちろん満たさなければなりません。最近ではCO2低減、リサイクルも考慮する必要がでてきています。そうしたトータル的に考えることがOEM、サプライヤーに不可欠になってきているように感じました。
各メーカーさんから写真撮影の許可は得ていますが、製品写真は当ホームページでは控えています。もしご興味がありましたらお問い合わせいただければ幸いです。